不世出の狂熱のボクサー、大場政夫。
今のボクサーには絶えて見られない、がむしゃらなまでに対戦相手に挑んでいく一種狂犬にも似たファイト。
まさに狂熱としか言いようがないチャチャイ選手との凄まじい最後の死闘。
1Rダウンを奪われ、そのときに足首を捻挫する。
しかし、片足を引きずりながらの逆転KO劇。その手に汗握る白熱のファイトは命の完全燃焼だった。
大場が王者のときに日本には世界王者は5人いた。
そのなかで、大場の人気はダントツで長身から打ち下ろす強烈な右ストレートやチャンスに畳み掛
ける炎の連打は我々を魅了していた。
しかも4度目、5度目の防衛戦は1Rにダウンを喫し、それを跳ね返してKO勝ちする逞しさがあり「リングでは絶対に10カウントは聞かない」と豪語していた。
大場はかなり貧乏な一家に生まれハンバーグをジムに入門するまで食べた事がなかった。
世界王者になって家族に家を建てるというのがモチベーションになっていたようだが72年3月に3度目の果たして念願の家を建て、6月の4度目の防衛戦のファイトマネーで日本に2台しかなかったシボレーコルベットを買った。
そのコルベットで人生のゴングをならしこの世を去る。
23歳の若さである。